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みどりの食料戦略システムで本当は何を狙っているのか?

2021年5月に政府が発表した「みどりの食料戦略システム」

政府の本当の狙いとは何なのか?

農業生産(畑作)に限定してですが個人的な見解をまとめてみました

陰謀論的なアレではありません のであしからず('ω')ノ

 

 

1.みどりの食料戦略システムとはなにか?

SDGsや持続可能な農業という言葉が現実味を持って語られるようになった昨今、政府も農業にテコ入れをしようと2050年までに有機農業面積100万haを目指すという国家戦略です

現状では2万ha程度なので、約30年で50倍まで有機農業面積を増やすことになります

なぜ、こんなにも無謀な課題を掲げたのか?

本当に持続可能な食糧生産だけが目的なのか?

 

2. おぼろげながら浮かんできた46%という数字を現実にするために...?

当時 小泉環境大臣が発した言葉ですが、温室効果ガスの削減目標です

この言葉は2021年4月22日夜の会見で発せられましたが、産業界はカンカンに怒ってしまいました

しかし、温室効果ガス削減は国際的に大きな武器になります

この点を政府は重視して無謀な挑戦へと漕ぎ出したのです

では、どのようにして46%削減を達成するのか?

工業や化学産業だけで排出抑制を目指した場合、規制によって締め付けることはできるとしても各団体が黙っていませんし、産業自体が後退してしまう可能性を孕んでいます

そこで、目を付けたのが農業界です

 

3. 農業のどこで脱炭素するのか?

産業別に見ると農業はほとんど日本産業界でCO2排出に関与していません

www.jccca.org

では、どこで脱炭素に貢献するのか?

それは、土壌への炭素貯留ではないかと考えています

土壌には腐植という有機物分解産物の最終形態とも言えるものが含まれます

これ以上分解がほとんど進まない物質であり、安定して土壌中に炭素を貯め込む物質でもあります

ここで、みどりの食料戦略システムに立ち返ってみると、有機農業面積を増やすというのが政策の大きな柱です

有機農業とは化学肥料・化学農薬不使用で運用される営農形態です

有機農業のためには植物のご飯でもある「化学肥料」を「有機肥料」に置き換える必要があります

つまり、有機物を大量に土壌へ投入する農業へ方向転換することで土壌への炭素貯留を加速させることができるのです

温室効果ガスの計算は排出を減らすことだけではなく、炭素を国土内にインプットした場合でもマイナスとしてカウントできる通貨のような性質を持ち合わせます

その点から言えば、発言力の比較的弱い農業界に炭素貯留を課すことで温室効果ガスの排出量を見かけ上減らすことができるのです

 

4. 農業界に脱炭素を押し付ける代償は?

明確に一番大きな影響を受けるのは化学肥料・農薬メーカーなどでしょう

農業面積の1/4で有機農業を実施することになれば売上は大打撃を受けることでしょう

打撃を受ければ新しい肥料の開発や新農薬の開発費に跳ね返りますから、例えば効率的な肥料効果を発揮する技術の開発や新しい病害虫が発生したときの農薬開発に遅れがでることでしょう

次に生産者が挙げられます 現在でも担い手不足・人材不足で人手が足りていない中で有機農業という手間のかかる営農をした場合、生産ロスによる収入の減少や長時間労働の問題が出てきます この点は補助金などで生産者の収入を確保することで問題を先延ばしにすることも考えられます

最後に消費者が考えられます 有機農業では生産量が落ちることが予想されますので、野菜の流通量が減少してスーパーでの野菜価格は高騰することが予想されます

 

5. 良いこともある?

かなり悲観的なことを書きましたが、仮に46%削減できれば国際的な排出量取引で日本は外貨を獲得できることになりますから、国益としては潤うかもしれません

また、前向きに考えれば有機農業の推進で新しい農業研究や営農方法を模索する機会にもなるでしょう

ただし、そのためには生産者サイドに大きな変革を受け入れる土壌や解決すべき技術的な課題が山積みであることは明白です

 

とはいえ環境大臣も変わるので、しれっと46%を取り下げて、目標を下方修正する可能性も大いにありますので、まだまだ静観している時期かと思います