農業LABブログ

農学研究者の技術・哲学・日常を公開

【解説】腐植酸資材 ~土壌改良とBS効果で一石二鳥!!~

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バイオスティミュラントの記事でいくつかの種類に分かれるところまで紹介したので、今回は腐植酸資材について詳しい記事を書こうかと思います

↓過去記事はコチラ

ppn-lab.hatenablog.com

 

 

そもそも腐植酸ってナニ?

腐植は皆さん耳にしたことがあるかと思います

ざっくりいうと土壌中の有機物が分解されたものです

この腐植のうち酸に溶ける部分が腐植酸(場合によってはフルボ酸)として資材利用されています

腐植酸資材は土壌改良材として「腐植酸質資材」として挙げられています

土壌改良材としての役割は保肥力の改良ですが、最近はその他に色々な効果があることが分かっています

ppn-lab.hatenablog.com

 

腐植酸の効果

土壌改良効果

土壌改良材として利用する際には以下の効果が見込めます

・保肥力を高める

・土壌の緩衝能を高める

ある程度分解された植物残渣なので肥料がくっつく隙間がいっぱいあります

また、肥料がくっつく部分にはマイナスの電気があるので、急激なpHの変動や化学的な改変作用を緩やかにする力がつきます(これが土壌の緩衝能を高めるという部分です)

土壌改良材で似ている資材として「泥炭(ピートモス)」があります

こちらも腐植酸を含んでおり、腐植酸の含有率で役割が変わります

 

泥炭と腐植酸の違いは?

泥炭は主に北方地域の泥炭層から採掘されて利用されます

これに対して腐植酸は石炭を酸で処理したものから作られます

泥炭は自然由来のものなのに対して、腐植酸は石炭を原料として工業的に製造される資材なのです

ただし、どちらも埋蔵資源を利用している点では同じですね

 

BS(バイオスティミュラント)効果

一般にバイオスティミュラントとしての腐植酸は以下のような効果が知られています

・塩類耐性

・高温/低温耐性

・根量増加

塩類耐性は土壌に施用したときの緩衝能に由来するものと植物が資材の刺激によって獲得するものに分かれます

高温/低温耐性、根量増加などは植物が資材の刺激によって獲得するものです

では、なぜ植物が腐植酸の刺激によってこういった機能を獲得するのでしょうか?

 

腐植酸というブラックボックス

腐植酸という用語は存在しますが、化学物質としての構造が複雑で未解明な部分が多く残っています

ある研究者が腐植物質の構造を解析した結果が以下ですが、色々な構造が複雑に組み合わさっていることが分かります

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引用:土・水環境に遍在するフミン物質の構造化学的特徴とその多様性 学術の動向

このため、腐植酸自体が色々な機能を持っている、もしくは土壌中での構造の破壊や再構築によって色々な化合物が生成されることによって植物の機能を向上させると考えられています

 

腐植酸資材は何を使えばよいのか?

「腐植酸はブラックボックス」の節で述べたように腐植酸資材と一言で括っても、バイオスティミュラントとしての機能には差が生じてもおかしくありません

このため、腐植酸資材を選定するためには企業の公表資料を下記ブログで示した方法で選定する必要があります

ppn-lab.hatenablog.com

 

私が調べた中では古くから販売されているアヅミンでデータの蓄積が多く、コスパも良いのでオススメです

アヅミンもアヅ・リキッドもデンカという会社が製造していますが、販売は主にJAのようです

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その他に

地力の素は少し公表データがありますが、公開されているものはごく一部です

メーカーはピィアイシィバイオという創業50年の会社なので、問い合わせれば販促用のデータがあるかもしれません

[rakuten:hokuetsu-noji:10000059:detail]

 

AGフミンは最近になって出てきた資材ですが、10a当たりのコストが高いにもかかわらず製造が追いつかないほど好評のようなので高い効果があるのかも知れません

 

求める効果によって使用方法を変える

土壌改良材とBSとして使用するときで使用方法は変えることをお勧めします

 

土壌改良材として使用するときは、圃場全体の保肥力・化学性の改善を行うのが目的になります

圃場全体に散布/土壌混和するのが良いでしょう(その分、量が多く必要になります)

 

BSとして植物の活性剤として使用するときは粒剤であれば株元にばらまき、液肥であれば葉面散布/株元潅注など植物に直接作用するようにしてあげてください

植物が作用成分を直接吸収できるようにすることでBS資材としての効果が発現しやすくなります

【解説】バイオスティミュラント

最近、農業界でよく耳にするようになった「バイオスティミュラント」

以前の記事で軽く触れましたが、今回はもう少し詳細に解説記事を書きたいと思います

ppn-lab.hatenablog.com

 

 

バイオスティミュラントの定義とは?

どのような資材をバイオスティミュラントと呼ぶのでしょうか?

日本バイオスティミュラント協議会では、『非生物的ストレス』を緩和する資材として定義されています

非生物的ストレスとは

・日照不足

・高温/低温ストレス

・塩類障害

・低栄養条件

など植物が物理化学的に受けるストレスを指します

また、バイオスティミュラント(=Bio:生物、Stimurant:刺激/活性)を意味しており、生物刺激剤、生物活性剤などと訳されます

世界中で注目が集まるバイオスティミュラント資材

引用:日本バイオスティミュラント協議会HP

 

どんな資材があるのか?

大まかに分けて6種類あります

・腐植酸資材

・海藻抽出物多糖類

アミノ酸/ペプチド

・ミネラル/ビタミン

・微生物

・その他(動植物抽出物/微生物代謝物など)

資材の元になる原料でカテゴリーが分かれており、その効果は一部で重複します

バイオスティミュラント」普及の鍵は、農業生産者への正しい情報提供【後編】 | 農業とITの未来メディア「SMART AGRI(スマートアグリ)」

引用:スマートアグリ

 

効果を整理した図が以下ですが、

ストレス耐性の付与ですと腐植酸、海藻、アミノ酸、その他のカテゴリーの資材で効果が確認されているものがあります

ストレスの種類によって使用すべき資材が異なることを考えるとさらに細分化されそうです

 

手ごろな価格帯ですとアイアグリ株式会社が販売しているAGシリーズが人気のようです

www.youtube.com

 

本当に効果があるのか?

仕事や個人で実験してみた感じだと全体的に作物の生育を底上げするような感触です

ストレスをかけた際に10~20%くらい生育量が改善したり、収量が上がる感じでしょうか(生産している方からしたら10~20%収量あがったら凄いことです)

ただ、例数は少ないですが劇的に生育が改善されるケースも目にしていますので、ストレスの種類と資材の種類、作物の種類が上手くハマるとバキバキに効果を実感できることもあります

ppn-lab.hatenablog.com

 

エビデンス(証拠)のない資材にはご注意

バイオスティミュラント資材は意外と高価なものが多いです

希釈して使用するにしても、農業資材の中ではそれなりのお値段がするので、以下の事項をチェックして可能であれば無料サンプルから試すのがオススメです

1. 栽培する作物(資材で使用例があるか)

2. 生育が悪いと思われる条件の確認(環境ストレス・病害虫・栄養不足等)

3. 資材効果のエビデンス(証拠)とその例数

 

特に3のエビデンス(証拠)を見る際のポイントとしては

・自社データ以外でデータを評価しているか(他の機関が評価しているか)

→自社のチャンピオンデータだけで資材効果を過剰演出していないか、客観的な評価が出来ているかが重要です

・何の作物で効果があったのか

→自身で作っている作物で効果が実証されているかは重要です 作物によって生理・生態は異なります

・どこの場所で効果があったのか

→気象条件は作物の生育に大きく関係しますので、実証した場所と近ければ効果が得やすいでしょう

・どのようなストレスに対して効きそうなのか

→作物がダメージを受けている(と思われる)原因と資材効果が合致しているか

 

以上のように安易に手を出してもなかなか効果を実感しにくいケースが多いので、高価な資材に手を出す際には少し考えてみる必要があるかもしれません

 

【趣味】天敵生物ハエトリグモ

農業で天敵生物(ダニやアザミウマの農業害虫を捕食する生物)というと、スワルスキーカブリダニが有名ですが、ナチュラルな天敵生物としてハエトリグモもいます

 

 

ハエトリグモは農地だけでなく、人家や外壁などにもいますが人によっては不快害虫なのであまりジッとみたことはないかも知れません

よく見ると目がクリクリしていて可愛らしい生き物です

 

巣は作らず、おしりから出る糸は移動用でスパイダーマンの元になった生き物です

 

今回は趣味で撮りためたハエトリグモの写真をまとめてみました

 

 

外だと手すりの上で良く見かけますf:id:PPN_LAB:20220103194523j:image

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畑だと葉っぱや土の上でぴょんぴょんf:id:PPN_LAB:20220103194543j:imagef:id:PPN_LAB:20220103194702j:image
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人懐こい個体だとハンドリングできます

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ハエトリグモの捕食シーン

ガブリといってますね🍚
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撮影は変わらず、TG-5です

 

【雑記】アカデミックを去った理由

大学1年生から研究室に所属して博士号を取得するまで、約10年間、私大・国公立大学の研究室を見てきました 博士号取得前に大学教員への推薦の話もありましたが、断りました

 

今は民間で研究開発職についていますが、そんな私がアカデミックではなく、民間の研究所をあえて選択した理由を書いていこうと思います

※あくまで私が見てきたアカデミックなので、多少偏っているかもしれませんがご承知おきください

 

 

現場まで時間が掛かりすぎる問題

大学では基礎的な研究から社会実装まで含めた研究がされています

それは、私がいた研究室でも同じで基礎研究~応用研究まで色々なことをする人たちがいました

色々なことを研究するのですが、成果を広げる手段が限定・制限されていて世の中に拡散するまで非常に時間が掛かります

最近ですと、産官学連携センターという部署が学内に設置されていることがあり、外部機関との折衝やプロモーションをしている所もあります

しかし、それでも「大学」という昔ながらの村の中では掟が多くて動きづらそうに見えました

会社は企業風土によりますが、私が所属する会社はある程度独立した部署ですと好きに営業・販促活動が出来るので、進めたい研究テーマ+お金(もしくはスポンサー)を持ってくれば比較的自由に活動できます

※別の研究開発職の友人に話したら、「そんな企業は稀だ」と言われたので、民間で括れないようですね

 

労働力が足りない問題

研究の主な労働力は学生なので選択されないテーマが出てくるとストップします

企業であれば重要なテーマには人を配置して計画的に進めることができますが、ポスドク・学生の労働力が足りなければ重要なテーマであっても一度ストップせざるを得ないのです

また、学生の労働力に期待しすぎたり、強制するとアカハラパワハラになります

何せ彼らは大学にお金を払ってくれているお客様であって、契約によって労働力の提供を約束しているわけではないのです(私の学生時代は労働力の強制提供やハラスメントは当たり前でしたが今は少ないでしょう)

その点、会社員であれば労務提供-給与を約束したうえでの活動になりますから、最低限の進捗は約束されているのです

仮に不良社員であれば減給処分や解雇、人員のコンバートなども出来ますが、大学教員は配属される学生を選ぶことは出来ません(入室時に面接するところもありますが、人材がいまいちでも採用0には出来ません)

 

同僚がいない問題

私はひとりだとサボりがちなので、同僚にはいて欲しいというか、職場には他人の目があってほしい人間です

かたや研究室の教員は基本1~2人体制です

部屋もそれぞれの個室が用意され、なんとなく中小企業の社長的な雰囲気で日々研究に取り組みます

このような状況ですと同じ研究をしている同僚はいないか、いても少ない環境です

そんな環境を学生時代に見ていて、

研究が行き詰まったら誰に相談するのか?

学生との人間関係や研究者間の憂さをどこで晴らすのか?

この辺は企業でも、ある程度の職位に就くと同じような環境だなと思うようになりました

そして、大学教員の就業環境にはもっと大きな問題があることに気づきました

・人間としておかしくなった時に道を踏み外してしまいがち

これは、私が見ていて非常に大きな問題だと感じました

ひとつは研究室という単位が閉鎖系であることから、独裁国家のような形になってしまうケースがあること

また、主な被害者は学生になりますが社会経験が少ないことから、その問題を指摘する手段に乏しい環境にあります

ふたつめは教員がメンタルや体調に変調を来たしたときに管理できないということです

通常の企業であれば、残業時間の管理・メンタルヘルスの管理などがあり、無茶な働き方にブレーキを掛ける仕組みがあります(ない企業もあるのは重々承知ですが...)

これに対して大学教員は基本が裁量労働制で残業の管理はありませんし、学生指導・学会参加・大学内会議・講義 etc.と非常に多忙です

その中で自身やチームのストレスや人間関係のマネジメントをしていかなくてはいけませんが、アカデミックをストレートで進んできた教員はそういった有機的な部分のマネジメント力が乏しい印象を抱いています

 

おわりに

色々と書きましたが、いずれも私が学生時代の頃の話なのでかなり昔の話になります

最近、大学を訪問すると研究室や職場の様々なマネジメントをされている教員の方もいて、逆に勉強させていただく機会もあるくらいです

ただ、ブラック研究室という言葉が生き残っているあたりに前時代的な研究室システムは健在なのだなと思うことも少なくありません

私が学生の頃は「使えない人材を大学の研究室で淘汰するから社会に出ていく人間の質が担保されている」ということが平気で言われていました

今の世代にそんな言い訳は通用しませんが、小さな村の中ではそのような論調がまかり通っているのかなと思います

doctorbusinessperson.com

 

【解説】土の『善玉菌』ってなに?(乳酸菌、バチルス菌、光合成細菌、酵母菌)

漫画ウイルスと細菌ベクターセット顕微鏡細胞細菌および微生物のイラスト白い背景に隔離されています - バクテリアのベクターアート素材や画像を多数ご用意  - iStock

 

肥料や堆肥で『土の中の善玉菌を増やす!』や『善玉菌を増やして土を再生する!』などのうたい文句を目にします

モノによっては菌を配合したことで素晴らしい効果のある資材であるかのように宣伝して高額のものがあるので、少し知識を蓄えて怪しいものを掴まされないようにする必要があります

 

ここで言われる『善玉菌』とは何を指しているのでしょうか?

一般的に販売されている資材に含まれているものを例にしてみました

全体的に肥料や堆肥で『良い成分』として扱われますが、入っているから良いというわけではないので実証実験などの参考資料にも目を通して、期待する効果を選別する必要があります

 

 

乳酸菌

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引用:Wikipedia「乳酸菌」より

 

最も耳にするのは乳酸菌ですね

乳酸を生成する菌類の総称でかなり大雑把なグループです

人の健康に限らず乳酸菌は農業利用でもいろいろな効果が報告されています

実は乳酸菌そのものよりも代謝物(乳酸菌が分泌する物質)による効果がいくつか報告されています

フェニル乳酸という発根促進物質やオーキシンやサイトカイニンなどの植物ホルモンなどを代謝することが知られています

これらの物質が及ぼす影響の一例として

・発根促進

・病害虫被害の抑制

・日照不足による生育不良の軽減

・地上部の生育促進/収量増加

などがあり、乳酸菌資材の施用により効果が認められています

ただし、すべての乳酸菌がこういった効果を持っているわけではなく、報告によっては特殊な菌株を使用しているので資材によって検証されている例を使用者側で確認する必要があります

 

バチルス菌

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引用:Wikipedia「バシラス属菌」より

 

バチルス菌は枯草菌や納豆菌を含む大きなグループ名です

BT剤(バチルス・チューリンゲンシス、BT剤 - Wikipedia)や炭疽菌(人や家畜の病原菌、炭疽菌 - Wikipedia)などもこのグループに入ります

バチルス資材として有名なもので「ゆめバイオ」という資材があります

もとは東京農工大の先生が開発されたもので、朝日アグリアという会社が製造・販売しています(チラシのリンク:http://www.asahi-kg.co.jp/cms/asahi/aaa/01_ja/04_bio/yumebio03.pdf

主に水稲用で研究がされてきた経緯があり、相当な試験数を経て育苗の健全化で収量を10-20%アップさせるという資材になってます

その他、

・土壌病害抑制

・発根促進

・土壌中の固定リン溶解

などが報告されています

こちらも特定の菌株で報告されている例が多いので、単に「バチルス配合!」だけではどういった効果が期待できるかは分かりません

実証試験例があればメーカーか販売店に問い合わせて選定する必要があります

 

光合成細菌

名前の通り、光合成できるバクテリアで炭素や窒素を土壌中に固定することを期待されます(資材だと窒素固定菌として表示されていたりします)

ただし、窒素や炭素の固定は主に水田土壌中(嫌気条件下)に限られます

畑のように土が空気に触れる条件(好気条件下)では有機物を分解して食べる普通の微生物として活動するものが多く、嫌気条件下になると光合成をして栄養を獲得するようになります

このため、畑での使用を推奨するような光合成細菌資材は、本来の効果を本当に得られているのか疑問が残ります

意外と高額で光合成細菌資材が販売されていて驚きました...

 

酵母

これも定義によって変わりますが、主にカビ(真菌類)のことだと考えて話を進めます

カビといっても多種多様で話にまとまりがなくなるので、酵母を使用した資材例としてアサヒバイオサイクルが開発したビール酵母液肥『セルエナジー』を挙げます

これはビール酵母に含まれるβグルカンという成分が作物の植物ホルモン生産を補助するような働きがあります

一例として、βグルカンの働きによって

・病害虫抵抗性

・環境ストレスへの耐性

・作物の根張り、地上部の生育促進

などの効果があるとされます

以上のように証拠(エビデンス)が集積された資材であれば理解して使用できますが、酵母を配合したからといってどのような効果が期待できるのかは分かりません

 

おわりに

以上のように土壌微生物の研究で作用が分かっているものはありますが、資材にこれらの菌を含ませたところで実際の効果が期待できるかは難しいところがあります

中には土壌微生物の世界が未解明な部分が大きいのを良いことに効果が良くわからないものを高額で販売する業者もいます

企業によっては証拠(エビデンス)を集めて公開している会社がありますので、資材を選定する際には是非、確認しましょう

 

【解説】センチュウに強い土壌を創る方法

フリー写真] 手の中の土と芽でアハ体験 - GAHAG | 著作権フリー写真・イラスト素材集

 

Twitterにてタイトルのような質問があったので解説を書きました

といってもまだまだ未解明な部分が多いのでこれからの研究によるところが大きいです

 

また、(悪い)センチュウに対してというよりも、土壌病害虫全般かなと思いますが今回はあえてセンチュウに焦点を当てて解説したいと思います

 

時間のない方は以下の要点だけ

・畑を耕さないと悪いセンチュウは増えにくくなる

・何故かというと線虫の天敵が増えるから

・浅く耕しても悪いセンチュウが増えにくくなる効果はある

 

 

土壌病害虫に強い土壌とは?

昔から土壌病害が発生しない土壌というものは存在が確認されてきました

こういった土壌を病害虫抑止土壌(英語だとサプレッシブソイル)と呼びます

抑止土壌ができる過程、どういった働きで抑止効果が得られるのかなど少しずつ研究が進んでいます

 

畑は耕さない方が抑止効果が上がるっ!?

事例としてはアメリカのダイズ生産地で36年間不耕起栽培をした(!!)試験圃場があります

その圃場を対象にして研究した事例です(Baoら(2010))

この畑にはダイズの生産量を下げるセンチュウ(ダイズシストセンチュウ)がいます

しかし、ダイズシストセンチュウがいるにも関わらず、ダイズの被害が少ないという圃場です(線虫害の抑止効果が高い圃場)

バオさんたちは2つの室内実験をして何が抑止効果に関与しているのかを探りました

1. 耕運を模してふるいを通す処理、通さない処理

2. 何も添加しない処理、殺細菌剤添加、殺カビ剤添加、両方添加の処理

に分けて処理をしました

その後、ダイズを栽培してセンチュウの増え方を比較しました

 

↓その結果です

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①土壌の耕運(かく乱)をするとセンチュウが良く増える
②細菌やカビを殺すとセンチュウが良く増える

 

このことからセンチュウを少なく保つためには、土壌中の微生物が関与してるということが分かります 特にカビを殺してしまうとセンチュウが増えやすいことが分かりました

このデータを振り返りますと、①の耕運の処理でセンチュウが良く増えたのはカビの菌糸がちぎれてカビにダメージがあったのではないかということが考えられます

 

センチュウに対して抑止効果を持つ菌としては

・線虫捕食菌(センチュウを捕まえて食べる菌)

・線虫寄生菌(センチュウに寄生して食べる菌)

・線虫卵寄生菌(センチュウの卵に寄生して食べる菌)

などがいて、いずれもコスモポリタン(どこにでもいる菌)なのでうまく菌の力を引き出すとセンチュウが少なく保てるという可能性が高いです

 

ちょっとだけなら耕しても大丈夫っ!?

実は国内でも検討された事例があります

田澤ら(2008)で浅耕栽培(5cm程度耕運)と普通耕起(15cm程度)でダイズシストセンチュウ密度を追跡した結果です

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この結果を見ると少し耕しても、それより下の土が保たれていると、センチュウが少なく保たれているため、抑止効果が出ると考えられます

収穫量も化成肥料を施肥して耕す方法を変えた場合、浅耕栽培で収穫量が良くなっています

 

その他の病害虫全体に効果を持つ菌

センチュウも含めて他の土壌病害虫にも抑止効果があるのが蛍光性シュードモナスという細菌が植物保護能力を持つとされています

色々なカビや細菌に対する代謝物産物(シュードモナスが出す抗菌成分)が結果として植物を保護する役割を持つという話です

バオさんの論文でも細菌を殺してセンチュウが良く増えるという結果もこういった細菌が関係しているかもしれません

katosei.jsbba.or.jp

 


 

【趣味】葉っぱの上の「何か」を観察

今日は野菜の栽培しているときに見かける菌やムシの拡大写真です

 

葉っぱの上の「菌」を観察

ネギのさび病

こんな感じでプツプツした症状

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拡大してみるとオレンジの水ぶくれがあります
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さらに拡大するとふくれたところからオレンジの胞子が出てるのが、分かりますね

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キレイなんですけど、ネギが枯れちゃうから早めに防除しないとダメです

 

これはよく分からない菌が葉の上に生えてました


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拡大してくとキラキラしたポンポンみたいのが見えます
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葉っぱの上の「ムシ」を観察

ハダニですね

よーくみないと分からないですが、中央の赤い点がハダニ

ほっとくと増えて葉っぱがやられて枯れてしまいます
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画像の上の方に脱皮した殻があったり、オレンジの小さな玉は卵ですね

小さい個体は幼体でしょう
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こちらはアブラムシ

葉っぱから汁を吸う虫でおしりあたりから甘露というネバネバの液体を出します
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甘露はアリが集めにくるのですが、アブラムシはアリに守って貰ってると言われてます
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こちらはハムシ

だいぶ葉っぱを穴だらけにしてますね
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小さな世界の広がりは無限大です✨

撮影はコンデジオリンパスのTG5にディフューザー付けて撮ってます

 

撮影方法はこの本が参考として良いかな