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【解説】養分を集めてくれるVA菌根菌資材

昨今、肥料価格が値上がりが話題になりますね

窒素、リン酸、カリウムなど必須で大量に必要なものが海外情勢の影響で輸入が難しかったり、値段が高騰したりしています

そのような状況なので、肥料の使用量を減らして対応できないものか、何か代わりになるものがないかなど、国をあげて対応しているような状況です

その選択肢の中にVA菌根菌、AM菌資材などがあります

今回はその資材について解説したいと思います

 

 

 

 

 

VA菌根とは?

VA菌根(vesicular-arbuscular mycorrhiza)を形成する菌類の総称です

最近はAM菌根(arbuscular mycorrhiza)というのが一般的なようです

ちなみにmycorrhiza=菌根で菌=fungiとは違います

『菌根』は菌類と植物の根が共生して出来た構造物を指します

共生なので菌類にもメリットがあり、植物側にもメリットがある状態です

 

菌の種類もいくつかのグループがあります、例:ギガスポラ、グロモスなど

菌根菌の詳細についてはちょっと古いかも知れませんが、「VA菌根菌の分類と生理(斎藤ら, 1992)」という総説にて解説されています(検索すれば無料で読めます)

 

VA菌根菌資材は土壌改良材にも定義されており、地力増進基本法でも機能が定義されています(以下の記事にVA菌根菌資材も掲載があります)

ppn-lab.hatenablog.com

 

VA菌根菌資材で集められる養分や効果は?

VA菌根菌資材で集められる養分について良く耳にするのは、「リン酸」ですね

これは植物も根から普通に吸収する養分ですが、VA菌根を形成すると根よりも細い菌糸を土壌中に伸ばします

伸ばした菌糸から植物が吸えない形のリン酸(不溶態リン酸や非可給態リン酸)を溶解して根に供給します

その他に鉄、銅、マンガンなどの微量要素の供給もされます

リン酸を溶解する機能があると考えると金属系の元素であれば多少は供給があると考えられます

この他に病害抵抗性の向上、乾燥ストレスに対する耐性付与などもあると言われていますが上記の総説ではエビデンスが少ないので半信半疑という感想です

私見ですが、菌類が植物体内に寄生(共生)するのでキチン質代謝物に対する応答で植物側に何らかの耐性付与がされても不思議ではないなと思います

 

どんな土壌や環境がVA菌根菌資材に適しているのか?

この点については色々な説があるので、難しいところですがひとつ言えるのは、リン酸の蓄積が少ない土壌でこそ資材の効果を発揮します

裏を返すとリン酸が過剰に蓄積している土壌(例えば土壌診断をして可給態リン酸が20mgも30mg/100g乾土もあるような土壌)ではVA菌根菌資材を使用してもあまりメリットはありません

VA菌根菌は植物の根に共生しますが、植物側にだけメリットがあるわけではなく、植物側からは菌類が養分を受け取っています

そのため、植物側が十分に吸収できるリン酸が土壌にある場合には共生するメリットがなくなり菌根の形成自体が少なくなります

このようなことを鑑みると、リン酸の蓄積が多いが植物側が吸収できるリン酸が少ない土壌であるとVA菌根菌資材を使うメリットが大きくなります

黒ボク土などはリン酸を蓄積して植物が利用できない状態にしてしまう土壌なので、このような土壌であればVA菌根菌資材の効果は大きく出るのではないかと思います

逆にリン酸を蓄積する容量が少ない土壌ですと、資材を投入しても効果が少ないと考えられます(例えば砂壌土のようにリン酸吸収係数が低い土壌)

 

どんな資材が販売されているのか?

昔からある菌根菌資材ですとセントラル硝子が販売している「セラキンコン」という資材があります

ギガスポラという胞子が大きいタイプの菌根菌を使用しています

www.cgco.co.jp

 

こちらも菌根菌資材ではお馴染みですね

出光興産が販売しているDr. キンコンシリーズです

全般に使用するものと一部栽培品目専用に商品開発がされているので、迷わずに使えます

 

こちらは最近出てきた資材でハイポネックスが販売している「マイコジェル」という製品です

スペインの会社が保有している菌のライブラリーから日本の作物に合わせてブレンドした菌根菌資材です

 

 

菌根菌資材は意外と高価に思えるかも知れませんが、共生しやすい作物を栽培することで菌の密度を保持したり、効果を安定させていくということも研究されています

例えば、ソルゴーやヒマワリなどの緑肥を導入する方法やバレイショやコムギなどの共生しやすい作物を間に挟むなどが報告されています