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【解説】有機肥料だけで施肥設計出来るかも!?~酸性デタ―ジェント分析~

農林水産省主導で動いている「みどりの食料戦略」

ここに来て有機肥料を使いやすくする分析方法が開発されました

今回はその分析法と有機肥料の何が分かるかを解説したいと思います

 

みどりの食料戦略の記事は以下リンク↓

ppn-lab.hatenablog.com

 

 

 

 

 

1. 有機肥料で施肥設計がしにくい理由

施肥設計をするうえで最も重要なのが窒素(N)です

有機肥料ではこのNが全量%として表示する義務があります

ただし、化成肥料と違って有機物の中に入っているN分なので全量が肥料分として土壌へ供給・植物に吸収されるわけではありません

そのため、有機肥料を使用して施肥設計を考える上ではこの全量Nのうちどの程度が供給されるNなのかを見極めるのが非常に難しかったのです

 

 

2. これまでは窒素無機化率やCN比を目安にしていた

全量のNがどの程度植物に供給されるのかを「窒素無機化率」と言います

例えばある有機肥料が10%の全量Nを含んでおり、このうち2%がアンモニア態や硝酸態のNになるのであれば、無機化率20%というように表現します

ただし、牛ふん堆肥とひと口に言っても全量Nのうち何%が無機化されるかというのは堆肥の材料や腐熟度などによっても変わってきます

また、有機肥料の分解特性の指標としてCN比(炭素窒素比)が用いられます

CN比が低いほど(Nが多いほど)分解されやすくNの供給能が高いと考えられています

しかし、肥料の種類によってはCN比が十分に低いにも関わらず供給されるNが少ないなどの課題がありました

概ねCN比が20より低いと窒素の供給が多く、20以上になると窒素の供給が少ないもしくは土壌中の無機態窒素(硝酸態+アンモニア態N)が有機化する(植物が利用できない形態になる)と言われています

 

 

3. 酸性デタージェント分析とは?

酸性のデタージェント(洗剤)で分解可能な画分が有機肥料を土壌に施用したときに分解放出される画分と類似するという発想から開発された分析法です

元々は家畜の粗飼料に関する栄養分の分析法を応用したところ、うまい具合に有機肥料の評価に当てはまったという経緯があります

www.naro.go.jp

 

4. ADF/MAP/ADSONで有機肥料のN放出量が分かる!

以下の図に示すように分析法というよりは理論に近い感じです

1. ADFの含量で速効性or緩効性のNを多く含むかの仕分け

2. 速効性のN主体の有機肥料はMAPという画分を分析して放出窒素量を推定

3.緩効性のN主体の有機肥料はADSONというADF内の窒素量を分析することで放出窒素量を推定

という流れになります

 

新しい分析法+理論のためとっつきにくいですが、農研機構が開発したアプリに項目を入力すれば大体の推定ができるようになっています

www.jeinou.com

 

分析機関としては、

ADF:公益財団法人日本肥糧検定協会

ADSON:片倉コープアグリ株式会社 つくば分析センター

などが分析受託をしています

 

皆さんもお気に入りの有機肥料があれば、どのくらいの窒素がその肥料から供給されているのか調べてみると化成肥料の削減量が具体的に分かるかも知れません