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【解説】バイオチャー(バイオ炭)という古くて新しい資材

バイオチャーという単語を聞いたことはあるでしょうか?

生物由来物質を炭化させたものを指す単語で竹炭や木炭もこれに当たります

今回はバイオチャーの施用効果や炭素貯留効果について解説していきたいと思います

 

 

 

バイオチャーが注目されるようになったキッカケ

海外の研究に端を発しており、2000年~2010年にかけてバイオチャーが農業生産にもたらす効果が分かってきました

その後、土壌への炭素貯留と農業生産効率の維持・促進についての知見が蓄積されます

現在でも地球温暖化対策の1つとして新たに注目を集めている状況です

 

バイオチャーの規格

私も調べてみて初めて知りましたが、国内における規格があります

これは業界団体(日本バイオチャー協会)が製作した規格ですが、分析法などはJIS(日本工業規格)に則っており、しっかりした規格に見えます

https://biochar.jp/standard/

 

炭素貯留効果について

バイオチャーについてはそれ自身が炭素含量の高い物質であり、生物の持つ炭素を分解されにくい形に変えて土壌に混ぜることで土壌への炭素貯留が期待できると古くから言われています

近年、炭素の排出量取引の項目にも取り入れられたため、農林水産省から施用量目安などの具体的な使用方法等が提示されています

バイオ炭の施用量上限の目安について:農林水産省

 

しかし、過去の研究事例では意外にも炭素貯留への効果を疑問視することも言われています

というのも、土壌中に存在する腐植物質の分解をバイオチャーが速めてしまう結果が得られているからです

参考文献:炭は環境にやさしくない?(NatureNEWS, 2008)

 

腐植も難分解性の有機物質でありながら、バイオチャーを混ぜることで難分解性有機物を分解する微生物活性が高まり、より分解されやすい腐植物質の分解速度が上がる可能性を示唆しています

 

 

土壌改良効果について

土壌改良効果は古くから知られており、保肥力の向上・土壌透水性/保水性の改善・微生物活性の向上等の多くが報告されています

基本的にはpHが上昇する性質のものが多いようなので、入れすぎには注意が必要ですし、粗悪品を掴まされると土壌に悪影響が出たり重金属が集積するなどの問題が懸念されます

3年程度の作物生育への効果については以下の論文が詳細に報告しています

 

水稲生産性の向上と地球温暖化緩和を目的とした籾殻くん炭の黒ぼく土水田への還元利用(小山, 2016)】

 

日本では何のバイオチャーを使用するのが良いのか?

月並みにはなりますが、作物生産している地域で発生する未利用バイオマスを使用するのが良いと考えます

わざわざ取り寄せて使用すると輸送コスト+燃料費で環境にやさしいとは言いづらくなるような気がするからです

 

例えば、水田地帯であればもみ殻が未利用で大量に余っているでしょうから、

もみ殻くん炭が良いかもしれません

 

他にも竹林や森林が近いところで伐採することがあれば竹炭や木炭など、河川敷で野焼きをするのであれば草木灰(バイオチャーの定義に入るか微妙ですが...)なども利用できると思います

 

また、下水汚泥の利用促進なども急務になっているようなので、下水汚泥炭化物なども利用が見直されて再登場するかもしれません