肥料や堆肥で『土の中の善玉菌を増やす!』や『善玉菌を増やして土を再生する!』などのうたい文句を目にします
モノによっては菌を配合したことで素晴らしい効果のある資材であるかのように宣伝して高額のものがあるので、少し知識を蓄えて怪しいものを掴まされないようにする必要があります
ここで言われる『善玉菌』とは何を指しているのでしょうか?
一般的に販売されている資材に含まれているものを例にしてみました
全体的に肥料や堆肥で『良い成分』として扱われますが、入っているから良いというわけではないので実証実験などの参考資料にも目を通して、期待する効果を選別する必要があります
- 価格: 770 円
- 楽天で詳細を見る
乳酸菌
引用:Wikipedia「乳酸菌」より
最も耳にするのは乳酸菌ですね
乳酸を生成する菌類の総称でかなり大雑把なグループです
人の健康に限らず乳酸菌は農業利用でもいろいろな効果が報告されています
実は乳酸菌そのものよりも代謝物(乳酸菌が分泌する物質)による効果がいくつか報告されています
フェニル乳酸という発根促進物質やオーキシンやサイトカイニンなどの植物ホルモンなどを代謝することが知られています
これらの物質が及ぼす影響の一例として
・発根促進
・病害虫被害の抑制
・日照不足による生育不良の軽減
・地上部の生育促進/収量増加
などがあり、乳酸菌資材の施用により効果が認められています
ただし、すべての乳酸菌がこういった効果を持っているわけではなく、報告によっては特殊な菌株を使用しているので資材によって検証されている例を使用者側で確認する必要があります
バチルス菌
引用:Wikipedia「バシラス属菌」より
バチルス菌は枯草菌や納豆菌を含む大きなグループ名です
BT剤(バチルス・チューリンゲンシス、BT剤 - Wikipedia)や炭疽菌(人や家畜の病原菌、炭疽菌 - Wikipedia)などもこのグループに入ります
バチルス資材として有名なもので「ゆめバイオ」という資材があります
もとは東京農工大の先生が開発されたもので、朝日アグリアという会社が製造・販売しています(チラシのリンク:http://www.asahi-kg.co.jp/cms/asahi/aaa/01_ja/04_bio/yumebio03.pdf)
主に水稲用で研究がされてきた経緯があり、相当な試験数を経て育苗の健全化で収量を10-20%アップさせるという資材になってます
その他、
・土壌病害抑制
・発根促進
・土壌中の固定リン溶解
などが報告されています
こちらも特定の菌株で報告されている例が多いので、単に「バチルス配合!」だけではどういった効果が期待できるかは分かりません
実証試験例があればメーカーか販売店に問い合わせて選定する必要があります
光合成細菌
名前の通り、光合成できるバクテリアで炭素や窒素を土壌中に固定することを期待されます(資材だと窒素固定菌として表示されていたりします)
ただし、窒素や炭素の固定は主に水田土壌中(嫌気条件下)に限られます
畑のように土が空気に触れる条件(好気条件下)では有機物を分解して食べる普通の微生物として活動するものが多く、嫌気条件下になると光合成をして栄養を獲得するようになります
このため、畑での使用を推奨するような光合成細菌資材は、本来の効果を本当に得られているのか疑問が残ります
意外と高額で光合成細菌資材が販売されていて驚きました...
- 価格: 7500 円
- 楽天で詳細を見る
酵母菌
これも定義によって変わりますが、主にカビ(真菌類)のことだと考えて話を進めます
カビといっても多種多様で話にまとまりがなくなるので、酵母を使用した資材例としてアサヒバイオサイクルが開発したビール酵母液肥『セルエナジー』を挙げます
- 価格: 10480 円
- 楽天で詳細を見る
これはビール酵母に含まれるβグルカンという成分が作物の植物ホルモン生産を補助するような働きがあります
一例として、βグルカンの働きによって
・病害虫抵抗性
・環境ストレスへの耐性
・作物の根張り、地上部の生育促進
などの効果があるとされます
以上のように証拠(エビデンス)が集積された資材であれば理解して使用できますが、酵母を配合したからといってどのような効果が期待できるのかは分かりません
おわりに
以上のように土壌微生物の研究で作用が分かっているものはありますが、資材にこれらの菌を含ませたところで実際の効果が期待できるかは難しいところがあります
中には土壌微生物の世界が未解明な部分が大きいのを良いことに効果が良くわからないものを高額で販売する業者もいます
企業によっては証拠(エビデンス)を集めて公開している会社がありますので、資材を選定する際には是非、確認しましょう