バイオスティミュラントの記事でいくつかの種類に分かれるところまで紹介したので、今回は腐植酸資材について詳しい記事を書こうかと思います
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そもそも腐植酸ってナニ?
腐植は皆さん耳にしたことがあるかと思います
ざっくりいうと土壌中の有機物が分解されたものです
この腐植のうち酸に溶ける部分が腐植酸(場合によってはフルボ酸)として資材利用されています
腐植酸資材は土壌改良材として「腐植酸質資材」として挙げられています
土壌改良材としての役割は保肥力の改良ですが、最近はその他に色々な効果があることが分かっています
腐植酸の効果
土壌改良効果
土壌改良材として利用する際には以下の効果が見込めます
・保肥力を高める
・土壌の緩衝能を高める
ある程度分解された植物残渣なので肥料がくっつく隙間がいっぱいあります
また、肥料がくっつく部分にはマイナスの電気があるので、急激なpHの変動や化学的な改変作用を緩やかにする力がつきます(これが土壌の緩衝能を高めるという部分です)
土壌改良材で似ている資材として「泥炭(ピートモス)」があります
こちらも腐植酸を含んでおり、腐植酸の含有率で役割が変わります
泥炭と腐植酸の違いは?
泥炭は主に北方地域の泥炭層から採掘されて利用されます
これに対して腐植酸は石炭を酸で処理したものから作られます
泥炭は自然由来のものなのに対して、腐植酸は石炭を原料として工業的に製造される資材なのです
ただし、どちらも埋蔵資源を利用している点では同じですね
BS(バイオスティミュラント)効果
一般にバイオスティミュラントとしての腐植酸は以下のような効果が知られています
・塩類耐性
・高温/低温耐性
・根量増加
塩類耐性は土壌に施用したときの緩衝能に由来するものと植物が資材の刺激によって獲得するものに分かれます
高温/低温耐性、根量増加などは植物が資材の刺激によって獲得するものです
では、なぜ植物が腐植酸の刺激によってこういった機能を獲得するのでしょうか?
腐植酸というブラックボックス
腐植酸という用語は存在しますが、化学物質としての構造が複雑で未解明な部分が多く残っています
ある研究者が腐植物質の構造を解析した結果が以下ですが、色々な構造が複雑に組み合わさっていることが分かります
引用:土・水環境に遍在するフミン物質の構造化学的特徴とその多様性 学術の動向
このため、腐植酸自体が色々な機能を持っている、もしくは土壌中での構造の破壊や再構築によって色々な化合物が生成されることによって植物の機能を向上させると考えられています
腐植酸資材は何を使えばよいのか?
「腐植酸はブラックボックス」の節で述べたように腐植酸資材と一言で括っても、バイオスティミュラントとしての機能には差が生じてもおかしくありません
このため、腐植酸資材を選定するためには企業の公表資料を下記ブログで示した方法で選定する必要があります
私が調べた中では古くから販売されているアヅミンでデータの蓄積が多く、コスパも良いのでオススメです
アヅミンもアヅ・リキッドもデンカという会社が製造していますが、販売は主にJAのようです
その他に
地力の素は少し公表データがありますが、公開されているものはごく一部です
メーカーはピィアイシィバイオという創業50年の会社なので、問い合わせれば販促用のデータがあるかもしれません
[rakuten:hokuetsu-noji:10000059:detail]
AGフミンは最近になって出てきた資材ですが、10a当たりのコストが高いにもかかわらず製造が追いつかないほど好評のようなので高い効果があるのかも知れません
求める効果によって使用方法を変える
土壌改良材とBSとして使用するときで使用方法は変えることをお勧めします
土壌改良材として使用するときは、圃場全体の保肥力・化学性の改善を行うのが目的になります
圃場全体に散布/土壌混和するのが良いでしょう(その分、量が多く必要になります)
BSとして植物の活性剤として使用するときは粒剤であれば株元にばらまき、液肥であれば葉面散布/株元潅注など植物に直接作用するようにしてあげてください
植物が作用成分を直接吸収できるようにすることでBS資材としての効果が発現しやすくなります