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【解説】テンサイシストセンチュウってどうなったの?【23.08.29】

2017年に長野県諏訪郡原村に侵入したテンサイシストセンチュウ(Heterodera schachtii、ヘテロデラ シャハティ)という新しい植物寄生性線虫の動向について書いていこうと思います

 

2017年から2-3年で防除が完了したと思って取り上げなかったのですが、改めて動向を調べたら色々なことが分かってきました

 

目次

 

1. テンサイシストセンチュウってなに?

テンサイシストセンチュウは日本で問題になる場合、アブラナ科作物(カリフラワー、ブロッコリー等)やホウレンソウへの被害が問題になります

形態は日本で発生しているシストセンチュウ(ダイズシストセンチュウ、ジャガイモシストセンチュウなど)に類似しており、シスト(耐久体)を形成して乾燥や低温等の不適な環境にも耐えます

シストや幼虫の見た目は他のシストセンチュウとは大きく変わりません

画像:植物防疫, 2019 ~日本におけるテンサイシストセンチュウの発生と緊急防除~

2. テンサイシストセンチュウの何が問題なの?

今まで国内で未発生であったため、使用可能な農薬の登録がありません

また、対抗植物や品種間での抵抗性が分かっていないため輪作での対応が難しくなります

現在のところ、DD剤で農薬登録があり緑肥用ダイコン(コブ減り大根)は非寄主(増殖のできない植物)であることが分かっています

 

また、侵入した本線虫はトマトにも寄生することが分かりました(実際に被害があるかは分かりません)

特に今回侵入が判明した長野県はキャベツやブロッコリーなどの産地であるため、拡大してしまうと大きな損害が出ることが予想されます

 

3. 発生からこれまでの経過は?

2017年に発生して以降、農研機構による懸命な調査と防除対策がされてきましたがジリジリと発生範囲が広がっている状態です

とはいえ、まだ発生範囲は長野県内の近隣市町村だけなので他県の生産者が心配する必要はなさそうです

実際に県外でアブラナ科野菜の生育不良が出た際に当該線虫の検査をしているようですが他県では検出がないとの報告があります

具体的な発生地域としては長野県原村から始まり、2020年に南北の茅野市、富士見町、2023年に東側の南牧村、川上村にて検出されてやや広がりを見せています

 

 

また、シストセンチュウ全般に言えることですが、根絶がとにかく難しい

徹底的に防除をしたをして、分析の検出限界以下になったとしても圃場の少しの土に残っている所から再び広がってしまうのです



今後も動向が気がかりなテンサイシストセンチュウです