日本で被害を出す線虫3種類について書きました
「線虫」とひとくちに言っても色々な種類、生態、被害があります
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ネコブセンチュウ
どんな生き物なのか?
よく聞く線虫ですね
世界的にもネコブセンチュウは作物被害の頂点です
↓下の写真のように根っこをボコボコにして作物の養分や水分の吸収を阻害します
↓どんな線虫かというと、もともとはにょろにょろした線虫の形をしていまして、根に入って植物から水分や栄養を奪います
これがネコブセンチュウ
— PPN LAB (@agri_soil_nema) 2021年11月22日
体のシマシマは貯蔵養分の脂肪球を消耗した結果です
動きは遅く、ぬるぬる動きます😉#農業#新規就農#ファインダー越しのわたしの世界 pic.twitter.com/Pm7AwZkgwK
↓その後に成長していき、大量に卵をお腹の中にため込んでふっくらと膨らみます
こちらの写真は根っこを切開して、膨らみかけの線虫を取り出しました
↓膨らんだ後に根っこからおしりを出して、「卵のう」というゼリーの中に卵を数百個含んだものを土の中に産み落とします(見やすくするために赤で染色してます)
そして、そのうち卵からふ化したにょろにょろの線虫が再び根っこに寄生するという生き物です
何に寄生して被害を出すのか?
大体の植物には寄生しますし、雑草でも増えます
作物としても大体のものには寄生しますが、「感受性」といってネコブセンチュウに寄生されるとダメージを受けやすい作物や人間側の都合で見栄えが悪くなり、商品価値が下がるといった被害が出ます
果菜類ですと
・きゅうり
・ピーマン
・オクラ
などは寄生されるとダメージを受けやすいです
商品価値が下がる作物としては根菜類が多くて
・サツマイモ
・ニンジン
などでこぶ状の被害痕が残るので商品価値が下がります
その他、大豆や無花果(いちじく)など幅広い作物に寄生して収穫量を減らします
何が厄介なのか?
ネコブセンチュウは卵がゼリー状の物質に包まれており、土に入ると土の粒子がゼリーにくっつきます
そうしますと卵のうは泥団子状態になるので、乾燥や薬剤から守られ、普通の線虫よりも環境耐性が高く、なかなか畑からいなくならないという厄介さがあります
また、作物を変えても大体の作物には寄生できますし、雑草でも増えることが出来るため一度畑に入ると根絶が難しい種類の線虫になります
この線虫が入った畑では、薬剤や緑肥、作物の輪作などを組み合わせて彼らとの上手い付き合い方を模索しなくてはいけません
どうやって付き合っていくのか?
作物によりますが、有名な線虫なので各社から薬剤が販売されています
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後は緑肥としても色々な種類のものが開発されていますので、栽培時期がうまいこと合えば頼もしい武器になります
意外と作物の感受性が弱いと被害がでないので、知らないうちに畑に入って繁殖していることがありますので、作物の栽培が終わったら、一度根っこを観察してみることをオススメします
↓作物の根っこの観察記事はこちら
シストセンチュウ
どんな生き物なのか?
人によっては聞く名前かも知れません
というのも、シストセンチュウは作物を選んで寄生するエキスパート型の線虫です
通常は土の中に『シスト』と呼ばれる耐久状態で存在しています
↓写真の茶色い粒が土から取り出したシストです
この中に卵が200-400卵ほど含まれています
↓シストを割るとこんな感じに卵がどっさり入ってます
↓線虫の卵はこんな感じ、線虫自体が折りたたまって入ってます
その後、作物の根から分泌されるふ化促進物質の刺激を受けて卵からかえって土の中に出ていきます
ダイズシストセンチュウのくねくね動画💃
— PPN LAB (@agri_soil_nema) 2021年12月6日
資料整理してたら出てきたので🆙#農業#ファインダー超しの私の世界#サイエンス pic.twitter.com/TfkpCWxksz
土の中に出ると根に寄生して養分・水分を植物から奪い、卵をお腹に抱えたまま根っこから出てきます
↓白い粒がシストです、この後に褐色になって土の中に脱落します
何に寄生して被害を出すのか?
シストセンチュウは種類によって寄生できる作物が決まっています
例えば、国内の主要線虫ですと、
ダイズシストセンチュウ:ダイズ、エダマメ、アズキ、エンドウマメなど
ジャガイモシストセンチュウ:ジャガイモ、ナス科作物
とネコブセンチュウと比べるとかなり限定的です(相当の偏食家といえます)
何が厄介なのか?
シストセンチュウは畑に入ると12-20年は土の中で生存できると言われています
それも、固いシストという元お母さんが殻となって守っているおかげです
また、ネコブセンチュウやネグサレセンチュウと比較して、薬剤耐性も高いため非常に防除が難しい線虫の種類です
被害もネグサレセンチュウやネコブセンチュウよりも、かなりダイレクトに収量に響きます 畑でまん延するとほぼ全滅とみて間違いない強烈な線虫です
↓真ん中左上あたりに色の薄い部分があると思います
はじまりはこのように畑の一部で生育不良が発生します
どうやって付き合っていくのか?
ジャガイモシストセンチュウは北海道と長崎の一部地域のみで発生しており、防疫所が管理しています そのため本州で問題になるのはダイズシストセンチュウのみと考えて良いと思います
薬剤耐性は高いものの、効果があるとされる農薬はありますので、やっぱり薬剤防除でしょうか ラグビーやバイデートはいずれのシストセンチュウにも登録がありますし、昔ながらのネマキック粒剤も登録があります
ネマトリンエースはなぜかダイズ・エダマメには登録がなく、アズキだけなので注意しましょう
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緑肥もダイズシストセンチュウに対抗するものがあるのでおすすめです
クローバー類、クロタラリアなど栽培時期が選べるラインナップが揃ってます
ユニークな方法としては『リョクトウすき込み法』というものがあるので、以下のURLを見てください 緑肥栽培と比べて短期間、農薬と比べて低コストで出来ます
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/h27kakushin/chiiki_2019_result-c035-01.pdf
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この線虫も一度入ってしまうと、長い付き合いになるので毎年のルーティーンとして防除対策を講じ続ける必要があります
ネグサレセンチュウ
どんな生き物なのか?
ネグサレセンチュウは他の2種類と違って根の中を出たり入ったりします
ネコブセンチュウとシストセンチュウは一生のうちの大部分を根の中で過ごすのに対して、ネグサレセンチュウは養分を貰いに根に入り、養分を得たら根の中もしくは土の中で卵を産みます
また、土の中にいるステージ(生育段階)も様々で色々な大きさのネグサレセンチュウが観察できます
口針は太く、頭の先端にキャップ状の構造が見えるのが特徴です
何に寄生して被害を出すのか?
ネグサレセンチュウは多くの植物に寄生できるので被害を受ける作物も様々です
有名なところでは根菜類が多く、主に品質の低下が問題になります
・ダイコン
・ゴボウ
・サトイモ
などがあります
この他にもキクやイチゴで被害の出る種類のネグサレセンチュウがあり、国内では被害が大きい線虫種になっています
↓大根のネグサレセンチュウ被害例
↓いちごのネグサレセンチュウ被害例
www.nogyo.tosa.pref.kochi.lg.jp
何が厄介なのか?
ネグサレセンチュウは目立った被害の出ない作物にも寄生するので、数%~20%くらいの収量減を引き起こしているケースがあります
ダイズシストセンチュウやネコブセンチュウですと、葉の黄化や枯れあがり、根の変形など症状が分かりやすいので異常を発見できます
しかし、ネグサレセンチュウは見た目が健全で少し作物が弱るくらいの被害が多いので発見が遅れる、もしくは気づかず長きに渡って収量をかすめ取っていくような性質があります
どうやって付き合っていくのか?
ネグサレセンチュウはネコブセンチュウ、ダイズシストセンチュウよりも薬剤耐性が低いので、農薬を使用することで高い効率で防除できます
一例をあげますと以下の通りです
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ただ、登録されている作物が限定的なので、緑肥を使用することもあります
緑肥としては以下のものがあります
↓花がつかないマリーゴールド:エバーグリーン(オオタバコガの誘引回避)
あらゆる線虫に対してほぼ無敵です
↓ネコブセンチュウとネグサレセンチュウ両方に効果のある優秀な緑肥:ギニアグラス
緑肥も品種によって倒せる/倒せない線虫があるので、きちんと調べて購入することをおすすめします