Twitterにてタイトルのような質問があったので解説を書きました
といってもまだまだ未解明な部分が多いのでこれからの研究によるところが大きいです
また、(悪い)センチュウに対してというよりも、土壌病害虫全般かなと思いますが今回はあえてセンチュウに焦点を当てて解説したいと思います
時間のない方は以下の要点だけ
・畑を耕さないと悪いセンチュウは増えにくくなる
・何故かというと線虫の天敵が増えるから
・浅く耕しても悪いセンチュウが増えにくくなる効果はある
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土壌病害虫に強い土壌とは?
昔から土壌病害が発生しない土壌というものは存在が確認されてきました
こういった土壌を病害虫抑止土壌(英語だとサプレッシブソイル)と呼びます
抑止土壌ができる過程、どういった働きで抑止効果が得られるのかなど少しずつ研究が進んでいます
畑は耕さない方が抑止効果が上がるっ!?
事例としてはアメリカのダイズ生産地で36年間不耕起栽培をした(!!)試験圃場があります
その圃場を対象にして研究した事例です(Baoら(2010))
この畑にはダイズの生産量を下げるセンチュウ(ダイズシストセンチュウ)がいます
しかし、ダイズシストセンチュウがいるにも関わらず、ダイズの被害が少ないという圃場です(線虫害の抑止効果が高い圃場)
バオさんたちは2つの室内実験をして何が抑止効果に関与しているのかを探りました
1. 耕運を模してふるいを通す処理、通さない処理
2. 何も添加しない処理、殺細菌剤添加、殺カビ剤添加、両方添加の処理
に分けて処理をしました
その後、ダイズを栽培してセンチュウの増え方を比較しました
↓その結果です
①土壌の耕運(かく乱)をするとセンチュウが良く増える
②細菌やカビを殺すとセンチュウが良く増える
このことからセンチュウを少なく保つためには、土壌中の微生物が関与してるということが分かります 特にカビを殺してしまうとセンチュウが増えやすいことが分かりました
このデータを振り返りますと、①の耕運の処理でセンチュウが良く増えたのはカビの菌糸がちぎれてカビにダメージがあったのではないかということが考えられます
センチュウに対して抑止効果を持つ菌としては
・線虫捕食菌(センチュウを捕まえて食べる菌)
・線虫寄生菌(センチュウに寄生して食べる菌)
・線虫卵寄生菌(センチュウの卵に寄生して食べる菌)
などがいて、いずれもコスモポリタン(どこにでもいる菌)なのでうまく菌の力を引き出すとセンチュウが少なく保てるという可能性が高いです
ちょっとだけなら耕しても大丈夫っ!?
実は国内でも検討された事例があります
田澤ら(2008)で浅耕栽培(5cm程度耕運)と普通耕起(15cm程度)でダイズシストセンチュウ密度を追跡した結果です
この結果を見ると少し耕しても、それより下の土が保たれていると、センチュウが少なく保たれているため、抑止効果が出ると考えられます
収穫量も化成肥料を施肥して耕す方法を変えた場合、浅耕栽培で収穫量が良くなっています
その他の病害虫全体に効果を持つ菌
センチュウも含めて他の土壌病害虫にも抑止効果があるのが蛍光性シュードモナスという細菌が植物保護能力を持つとされています
色々なカビや細菌に対する代謝物産物(シュードモナスが出す抗菌成分)が結果として植物を保護する役割を持つという話です
バオさんの論文でも細菌を殺してセンチュウが良く増えるという結果もこういった細菌が関係しているかもしれません
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