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【解説】植物は『お酢』で強くなるのか?

家庭菜園などで農薬の代わりに使われる『お酢(酢酸)』

 

色々な雑誌で取り上げられ、ホームセンターなどでもお酢由来の製品として販売されていますね

 

 

今回はこの『お酢』で植物がどうやって強くなるのかを見ていきたいと思います

 

 

お酢(酢酸)』は植物が合成するストレス適応のための物質

植物がストレスを受けると、体内で酢酸を合成します

何故、酢酸を合成するかというと、『ジャスモン酸』合成させるための信号の役割を酢酸が担っているからなんです

参考ページ:酢酸を使って乾燥ストレスに打ち勝つ植物の生存戦略とは | academist Journal

 

 

『ジャスモン酸』ってなに?

ジャスモン酸は植物がストレスを受けると、そのストレスに応答して出てくる物質です

このジャスモン酸が合成するためのスイッチが酢酸です

ジャスモン酸はさらに他の物質を作るための信号となり、植物が持つストレス耐性に関する働きが強化されます

ja.wikipedia.org

 

お酢(酢酸)』で植物が強化されるメカニズム

体内で酢酸は合成されますが、それはストレスを受けた後になります

そのため、ストレスを受ける前に酢酸を植物に撒いて吸収させて、ストレスに応答するメカニズムを動かしてしまおう!という発想でお酢の資材が開発されました

 

お酢(酢酸)』で何のストレスに強くなれるのか?

乾燥

一番有名なのは乾燥ストレスに対して強くなることです

乾燥のストレスを受けると同様のメカニズムが働きますが、先に酢酸をまいておいておくことで、ストレスに対する応答を潤滑にすることが報告されています

植物にお酢≒乾燥のストレスと勘違いさせて、応答を覚えさせるとも言い換えられそうです

 

病害虫抵抗性

お酢をもとにジャスモン酸が出ると病気や害虫に対して抵抗性を持ちます

ジャスモン酸からさらに誘導される植物体内の物質を病気や害虫が嫌うようで、虫よけ・菌よけになるというのが今のところ分かっているところです

主に

・ハダニ

・アブラムシ

・コナジラミ

・灰色カビ病

うどんこ病

・(アザミウマ)

で効果があるようです

※()は酢酸ではなくジャスモン酸濃度の直接上昇で忌避が確認されています

また、ジャスモメートというジャスモン酸を直接使用したホルモン系の農薬でトマトのアザミウマに対しての適用があるので、ジャスモン酸をどうやって出させるかがカギなのは確かなようです

 

酢酸資材の使用感と害虫忌避試験の感想

ネギに発生した害虫で酢酸資材を使ってみましたが、少し酸っぱいにおいがするくらいでほとんど気になりませんし、葉に汚れなども残りませんでした

ただ、害虫の被害の違いはあまり分からなかったです

資材にはネギの適用は書いてなかったので何か折り合いが悪いのでしょう

恐らくですが、ネギの葉はワックスが強く、水を良く弾くのでうまく葉っぱに乗らず吸収されなかったのではないかと推測しています

このため、全ての作物にお酢が使えるかというと、葉の性状で効果に差が出るかと考えています

また、ラベルには2-3日おきに散布する必要があると書いてあるので、乾燥ストレスのように一度まくと一定期間ストレス応答を覚えてくれる、というよりは病害虫に関しては回数を重ねて忌避物質を蓄積させていく必要があるのかなと思いました

 

まとめ

お酢は身近な材料であり、安全性なども問題ない食品なので植物に使うのに抵抗感がないと思います ただし、効果については植物の種類や品種によって差がでることが予想されます

この差をなくすために展着剤(葉への吸収をよくしたり濡れやすくするような材料)の使用も考えられます

実際にやさお酢という製品にはキシリトールや乳化剤などが入っているので、葉への吸収を増加させたり濡れ効果を上げるような工夫がされているように思います