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【解説】流行りのBLOF理論とはなんなのか?

最近、色々なところで目にするBLOF(ブロフ)理論

Biological farmingの略だそうで生物学的農業、生態系調和型農業を意味するそうです

では、どういう農業なのか所感を交えながら見ていきたいと思います

 

 

1. BLOF理論の目標

BLOF理論の目標についてですが、私はBLOF理論信者ではないので推して知るべしなのですが、詰まるところ「持続可能な農業の創出」だと思っています

具体的には有機農業についてサイエンスに基づく体系確立を行い、理論立てて営農すること

と書くと、今までの有機農業が妄信的・非科学的だったみたいな印象になるのでアレですが、

今まで感覚の領域を抜け出せなかった有機農業をエビデンスのある有機農業へ発展させたものとしてBLOF理論が注目を集めているように感じます

 

2. BLOFの要とは?

BLOFの最重要事項として見受けられるのは、植物の養分としてアミノ酸、ペプチド(アミノ酸がつながったもの)、タンパク質(ペプチドがつながったもの)を養分として植物に与えること

慣行農業では無機態窒素(硝酸態窒素、アンモニア態窒素)を植物に吸収させて光合成で同化した炭素と混ぜることで、アミノ酸やタンパク質を合成させます

BLOFではアミノ酸、ペプチド、タンパク質を植物に直接吸収させることで植物の合成の手間を省略させようというのが主な理論のようです

 

3. 植物はアミノ酸・ペプチド・タンパク質を吸収できるのか?

植物が吸収できるかどうかは分子量(成分の物理的な大きさ)で決まります

各カテゴリーの分子量は、

硝酸態窒素:60-100程度

アミノ酸:100-200程度

ぺプチド:1000程度

タンパク質:5,000-150,000程度

となっています

植物が硝酸態窒素を吸収するということから見ると、アミノ酸くらいまでの大きさなら吸収できるように思えます

実際に植物がアミノ酸を直接吸収したことを証明する論文も報告されています(二瓶, 2010)

では次にペプチド(アミノ酸が繋がったもの)はどうでしょうか?

アミノ酸の約10倍、1,000程度の大きい物質になりますが、こちらも吸収することが確認されています(二瓶, 2021)

上記の二瓶(2021)では8000程度の分子量であれば吸収することが報告されています

つまり、タンパク質の一部までは植物が吸収できることになります

 

4. BLOFで慣行以上の収穫量は得られるのか?

さて、BLOF理論で示されるアミノ酸、ペプチド、タンパク質の一部くらいまでは植物が吸収できることが分かりました

では、BLOF理論のように上記の有機物を吸収することで植物がより良く育つのか?

これについては、現状では未解明と言わざるを得ません

というのも、植物によって上記有機物を吸収した後の代謝(体内処理の仕方)が違うようなのです

吸収=植物体と同化 ではなく植物体内で合成にちゃんと利用されるかが重要となります

一部のアミノ酸(グルタミン、アスパラギン等)では無機態窒素よりも利用効率が高い一方で、別のアミノ酸トリプトファン、ロイシン等)では生育を阻害するとの報告があります

ただし、上記の結果はあくまで実験室内の無菌条件下での結果なので、実際の畑で何が起こっているかまでは分かりません

現状では、確かに植物の利用効率が高いアミノ酸やペプチドが存在するという点は確かなようです

窒素成分を同量含むようにしていくつかの有機肥料のみで作物を栽培した場合において、化学肥料と同程度の収穫量が得られる肥料があるものの、化学肥料を明らかに上回るものがないのも事実です(二瓶, 2010)

 

以上、科学的な知見を見ながら書きましたが実際にはまだ分かっていないことの方が多いようです その部分をBLOF理論が実際の現場で検証を行いながら営農体系を構築しているのであれば、今後分かることが増えて理論的な有機農業へと開花するように思います