農業LABブログ

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【解説/雑記】線虫に対する天敵微生物資材はなぜ効かないのか?

またしても挑戦的なタイトルになってしまいました

全く効かないという話ではないので、そのあたりをご理解いただけると幸いです

はじめに

線虫の天敵資材として

· パストリア水和剤

· 線虫捕食菌資材

· 線虫寄生菌資材

など

色々なものが実用化されています

しかし、これらの資材に対する感想は様々で、

ある農家さんは「すごい効くから毎年入れてる!」

という一方で

別の農家さんは「数年試したけどダメだった...」

と一貫した感想は得られません

(どんな資材でもそうですが、ここまで感想がバラける資材も珍しい...)

 

現在の線虫に対する天敵資材について

天敵資材というと、テントウムシ(vsアブラムシ)やスワルスキーカブリダニ(vsハダニ、アザミウマ)などを連想する方が多いかなと思います

実は土壌中の線虫に対する資材もあるのです

上述のものでは私が知っている範囲では以下のようなカテゴリーに分かれます

・パストリア水和剤:農薬

・線虫捕食菌:土壌改良材

・線虫寄生菌:土壌改良材

パストリア水和剤はほぼ唯一、農薬の登録を受けて販売されてます

 

線虫捕食菌資材は土壌改良材というカテゴリーで販売されています

(商品表示などは勘案されてますが、個人的にはギリギリの表示だなと感じます...)

 

線虫寄生菌を直接利用した資材は私が知る限りはありません

が、間接的に土壌中にいる線虫寄生菌を活用しようというのが

カニガラ資材やキチン系の資材という認識です

 

 

 

個人的にはバチスター水和剤あたりに線虫への効果がないかな?と試してみたい気持ちがあります

 

 

パストリア水和剤=パスツーリア ぺネトランスという絶対寄生菌、つまり線虫がいないと生活できない菌を使用しています

このため、他のエサに浮気せず、線虫だけを食べてくれるので、ある程度効果が安定し防除効果(線虫をやっつける効果)を得られると考えられます

 

その他にネマヒトン(有効成分(菌):モナクロスポリウム フィマトパガム) という線虫捕食菌を用いた生物農薬もありましたが登録が失効(1990年登録、2013年失効)しています

こちらの線虫捕食菌農薬が失効したため、いくつかの企業が捕食菌を用いた土壌改良材を販売し始めたのではないかと思います(農薬で有効成分登録されていると、土壌改良材に同有効成分を入れられないことがあります)

 

 

なんで線虫天敵資材は効きづらいのか?

テントウムシやスワルスキーカブリダニなどの昆虫や捕食性ダニは基本的に外気に触れ、葉の表面で生活をします

そのため、極端な生活環境でない限り生存でき、エサとなる害虫がいれば困りません

 

一方で線虫の天敵となる資材の中身は主にカビ(もしくはカビの胞子)です

生活環境は土の中で線虫も食べるけど、土の中の有機物も食べるよというスタイルを取っています(パスツーリア菌を除く)

土の中は資材に含まれる細菌やカビ以外にも多くの生き物が生存しており、土壌によって優占できる細菌やカビの種類が異なります(微生物の陣取り合戦が非常に盛んだと思ってください)

また、土壌によって含まれる有機物の量・質が違うので線虫捕食菌が線虫を食べるか、その他の有機物を食べて生活するかは資材を土に入れてみるまで分からない、もしくは土壌の管理の仕方によっては数ヶ月単位でその効果が変わることも予想されます

 

そのため、資材を施用する畑の土壌条件によって効果がまちまちという状況になります

また、線虫捕食菌自体はコスモポリタン(どこにでもいる生物)なので、わざわざ畑に撒かなくてもよいのでは?との見方もあります

1888年に線虫捕食菌が発見されて以来、菌学者の興味を引き続けた線虫捕食菌ではありますが資材化を検討してはは失敗を繰り返し、出来た製品も使用する畑によって効果がまちまちという結果は現在でも変わっていません

 

まとめ

線虫天敵資材は魅力的に見える!

中でも線虫捕食菌は面白い!

けど、効果は畑によってまちまちだから過剰に期待しないように!

というところでしょうか

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