最近、Twitterで問い合わせが多いので表題の件について書こうかと思います。
イモグサレセンチュウとは?
ニンニクで主な被害が出る植物寄生性線虫です。ある範囲の生物の総称ではなくイモグサレセンチュウ(Potato rot nematode, Ditylenchus destructor)という単一の種類の線虫です。
場合によってはクキセンチュウ類として括られます。
名前の通りジャガイモで被害が確認されており、球根類(アイリス・チューリップ・スイセン)、そして表題のニンニクで被害が確認されています。
線虫の中では結構大きく、頭部に備わる針は短く太いという特徴があります。
イモグサレセンチュウ:頭部 尾部
被害形態
名前にdestructor(破壊装置)なんてつくわけです。
ディティレンクス属の破壊装置の名を冠する線虫ですよ。
北高の猟犬とか時計台の狙撃手みたいな強者感ありますね。
話がそれました。。。
ここではニンニクに限って簡単に被害形態を解説します。
1)畑で植えたニンニクが枯れる
2)収穫したニンニクが保存中もしくは出荷後に腐る
特に2)の方が問題になります。在庫を保存中もしくは出荷先に納品した後に腐れるので納品後にクレームになるわけです。
被害にあったニンニク
圃場への侵入経路
圃場へは土壌(農機の貸し借り、長靴に着いた土 など)もしくは感染した種芋を介して侵入してきます。
現在のところ、ジャガイモのシストセンチュウのように種芋生産圃場での検査が法的に義務付けられているわけではないので、分布は広がりつつあります。
宿主
宿主については発生地域によって若干異なっていますが、ユリ科(玉ねぎ、ネギ、ニンニク)に寄生、一部被害が発生するようで、その他インゲンマメ、タンポポでも増殖できるようです(下記リンク参照)その他の作物については現在のところレポートはありませんが、上記のように科を跨いで寄生できるようなので、色々な種類の作物で増殖できる可能性が高いと考えられます。
防除方法
防除には種芋の温湯消毒、薬剤による消毒があります。
土壌ではくん蒸消毒や粒剤による消毒なども一定の効果が認められるようですが、文献をいくつか見る限りでは種子消毒と土壌消毒を併用するのが良いようです。
また、侵入を許すと根絶は困難なようです(ほかの線虫と同様ですね)。
他の線虫では緑肥などを用いた防除法もありますが、この線虫については登録されている緑肥がありません。おそらく宿主範囲が広いため開発途上ということだと推測されます。
その他の還元消毒や太陽熱消毒などの嫌気環境をつくることで消毒できる可能性もありますが、ほとんどのニンニク圃場は露地圃場であるため現実的には難しいと思われます。
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対応策
・種芋の消毒を徹底する
・圃場で枯死した株が出たら抜きとる(可能なら株を線虫検査にだす)
・収穫後にランダムで鱗茎を抜き取り、線虫検査に出す
・線虫の発生が確認されたら圃場の消毒を徹底する(クロピク、ビーラム等)
⇒粒剤を使用する場合には成分の異なるものでローテーションを組むこと
ホスチアゼートなどの液剤も土壌潅注では連続使用しない方が良い
分解菌が集積して効果が薄くなったり、ほとんど効果が出なくなる可能性がある
・輪作は「宿主」の見出しでも書いたように作物を慎重に選ぶ必要がある
⇒下手に輪作で畑を変えると却って汚染を拡大する可能性がある またジャガイモやネギなど栽培が容易なもので増えやすい傾向にあるので留意する
【随時更新】登録農薬(種芋消毒)【2021.12.03現在】
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(栽培中も使用可)
こんな感じでしょうか。
だいぶ農薬が充実してきましたね。
輪作作物の選定が課題なようなので、イモグサレセンチュウが発生している圃場で栽培した作物の根を送っていただければ、私の方で寄生されているか分析することが出来ます。
青森県での新しい技術開発は2020年以降発表がないようなので、まだ課題は多そうですね
品種による対応
以下の記事にまとめています
まだ検証中のデータでもあるようなので、確実に効果が出るかは分かりません